悪意に立ち向かう希望の物語なのかもしれない

 最後に、イエズス会の神父であり、制作会社Loyola Productionsの創始者でもあり、本作の制作総指揮に関わっているエドワード・シーバート神父の言葉を引用しておこう。

「『ヴァチカンのエクソシスト』には、信仰に対してかなり挑戦的な側面があります。罪と悪に光を当てると、私たちの過去と現在における痛みが映し出されてしまう。この映画で描かれる悪魔は、極端で誇張されていると思えるかもしれませんが、私たちの心の乱れや邪悪さには、私たちを支配するほどの力を持っています。祈りの持つ力、悪魔を名指しすること、罪を許すこと、そして悪を征服することが信仰の要だと私は信じてきました。最後に敵が敗北する物語はすべて、最終的には希望の物語なんです」

 そう、やはり本作はエンタメ性を高める目的のもと誇張をしていたとしても、同時に“信仰”について真摯に向き合っている。悪魔だけでなく、世の中の“悪意”そのものに立ち向かう希望の物語としても読み取れるだろう。謎解き、アクション、ホラー、ラッセル・クロウのかわいらしさ、それぞれを大いに楽しみながらも、そのことに目を向けてみるのも意義深いことのはずだ。

『ヴァチカンのエクソシスト』
・原題:The Pope’s Exorcist
・日本公開表記:7月14日(金)全国の映画館で公開
・監督:ジュリアス・エイヴァリー
・ガブリエーレ・アモルト著「An Exorcist Tells His Story」および「An Exorcist:More Stories」に基づく
・出演:ラッセル・クロウ(『グラディエーター』『ビューティフル・マインド』)、ダニエル・ゾヴァット(『ドント・ブリーズ』『イット・フォローズ』)、アレックス・エッソー(『ドクター・スリープ』『セーラ 少女のめざめ』)、フランコ・ネロ(『ジョン・ウィック:チャプター2』『続・荒野の用心棒』)、ローレル・マースデン(「TVシリーズ「ミズ・マーベル」)、ピーター・デソウザ=フェオニー
・上映時間:1時間43分 PG12