いいものを作れば勝手にヒットすると思われがちな映画ですが、宣伝されなければ映画はヒットしません。それこそ、今では日本人はもちろん、海外にもその名をとどろかせているスタジオジブリですが、昔は熱心なアニメファンぐらいしか見ておらず、国民的大ヒットになったきっかけは『魔女の宅急便』からです。

『魔女宅』は「宅急便」というタイトルがヤマト運輸の登録商標であったため、トラブルを避けるためにスポンサーになってもらい、全国のヤマト運輸の事業所、宅急便取り扱いセンターにポスターが貼られ、日本テレビからの出資を取り付け、日本テレビ系各局の情報番組で『魔女宅』を取り上げてもらえることになり、この二社による強力なバックアップがあったことで『魔女宅』は当時のジブリ作品最大のヒットを記録。『魔女宅』の成功によってジブリ、宮崎駿の知名度は一躍日本中に広まったのだ。

『魔女宅』が傑作なのはいうまでもないが、大ヒットしたのはやはり大規模な宣伝があったからだ。ほかにも洋画『アルマゲドン』は本国では派手な特殊効果の映像をセールスポイントにしたスペクタクル・アクション超大作として宣伝されていたが、日本の配給サイドが、試写を見せたマスコミの反応から「アクションあり、その上泣ける、家族愛の映画」という部分を宣伝に打ち出し、14週連続ランキング1位という不動の記録を打ち立てた。ヒットの影には宣伝あり、だ。

 そう考えると今回のジブリの「宣伝しない」戦略がどれだけ異常なのかがわかると思う。大宣伝でジブリを日本一の製作スタジオにしてきた鈴木敏夫プロデューサーはいかなる戦略で「宣伝しない」方針を決定したのか?