ある日、シンゴさんから「原宿来れる?」って電話が来て、カフェに行ったら「今日、ひとみさん来れるから」っていうことで。めちゃくちゃ緊張するじゃないですか。そうこうしているうちにひとみさんがタバコを吸いながら現れて、座った瞬間に「あんた、なんだっけ? ラッパーなんだっけ? 私の名前使って何かしたいんでしょ? 何したいの?」と言われて。
「自分は本当にこのカルチャーが好きで、今も情熱を持ってやれるのもひとみさんが作ってこられた歴史があるからで……」とか説明したら、半ば遮るように「あ~もうそういうのいらない。あんた、ラッパーだったら曲聴かせなさいよ」って(笑)。でも曲流したらすぐに止められて、「いい声してるじゃない。ここでラップしなさいよ」って返されたんですよ。やるしかないじゃないですか。
その場で「UKウェイブ/マルコム、ビビアンウエスト/セックスとチャカ……」ってラップしたんですけど、「あんたいいこと言ってるじゃない。私も昔80年代にラップしようとしてたんだけどね。ところで、あんた貧乏なの?」って。「貧乏だった時期もあります」って言ったら「だったらいいわよ」って言っていただけて……そこからいろいろとひとみさんの昔の話を聞きたくて質問したんですけど、「あのね、そんなの覚えてないわよ。私、今を生きてるんだから」っておっしゃってました。めちゃくちゃカッコよかったです。
――へぇ! それは痺れますね……。じゃあ、その場でアートワークもOKが出たんですか?
VIKN その場でほかにもいろいろあったんですけど、最終的にはMILKの写真も使えるようになりました(笑)。1時間弱くらいかな、その間ひとみさんはずっとスパスパとタバコ吸ってて。
なんかね、やっぱり人としてエネルギーに満ちていた。自分も年を取ってもずっと働いてたほうがいいのかなと思いました。ずっと闘ってきてる人じゃないですか。70年代に、それまでまったくなかった「パンク」とか「かわいい」といった概念をファッションに持ち込んだ異端児だったし、時代の反逆児だと思う。そのエネルギーがみなぎってた。