――本作を聴いていると、本質を見ていこうというVIKNさんのスタンスは非常に伝わってきます。
VIKN 自分は本質を大事にしたいし、あと「ニッチであること」にもこだわってますね。さっきの宇田川町とヒップホップの話とかも、確かに流行ってはいたけど、とは言え世間から見るとだいぶニッチな音楽だったんですよ。MILKもそうじゃないですか。アイコンであり偉大な存在だけど、やっぱりニッチ。だから自分はそういうところに目を向けていたい。
――ニッチであり、本質であるものを好むと。
VIKN そうです。そういうものをどんどん掘り起こしていきたい。皆が当たり前にもてはやしているものは取り上げる必要がない。だから、自分がもし10代だったら、今これだけヒップホップが流行ってる中でヒップホップをチョイスしているかはわからない。
あと、最近のラッパーって、いかに巧いラップをするかっていうところでアスリートっぽくなってるじゃないですか。バトルの影響もあると思うんですけど。でも、自分たちの世代って巧いとかどうでもよかった。巧いとかじゃなくて、ヤバいかどうかの問題。自分はそういう大雑把な感覚でラップを捉えています。
――まさにブッダが持ち込んだ「ILLかどうか」って価値観ですよね。そうすると、VIKNさんは今回の作品をどういった人たちに聴いてもらいたいと思っていますか?
VIKN よく「若い人に届いたらいいね」って言ってもらえるんですけど、その気持ちはまったくないです。自分は同世代に向けて作ってる。若い人はもうそこでカルチャーが出来上がってるじゃないですか。トラップもドリルもジャージークラブも、全然違う音楽をやっていてそれでいいと思う。そこにどうこう言うことなんてない。
だって、自分が若いときにすごく年上のECDに本当にフィールしていたかというと、そんなことなかったから。でも、年を取ったらわかることがあるのも確か。だから、若い人には20年後に聴いてほしいですね。