日本版は「あはれ萌え」ののび太
日本版『1秒先の彼』での萌えは「あはれ萌え」だ。
レイカはやせっぽっちで、地味で、幸が薄そうで、言葉数が少なく、挙動がややスローリーだが、実に健気(けなげ)な人物として描かれる。弱者が困難に立ち向かっていく際に発するいじらしさ、いたましさ、可憐さ。舞台である京都の平安文学にひっかけて言うなら、「かわいそう」と「かわいい」ブレンドされた「あはれ」というやつだ。後半で判明する彼女の気の毒な生い立ちも、この「あはれ萌え」を加速させ、男性たちの保護欲や庇護欲を掻き立てる。
しかも日本版は、その「あはれ萌え」に、台湾版のシャオチーとは性質の異なる「ギャップ萌え」まで掛け合わせてくる。レイカは「ワンテンポ遅い」だけに、どんくさい。しかし、どんくさいにもかかわらず、大切なハジメのためなら驚くほど大胆な行動をとり、華奢なのに結構な力仕事までこなすのだ。このギャップたるや。この「あはれ萌え×ギャップ萌え」に、観客(特に男性)はやっぱりズギュンとやられてしまう。
『ドラえもん』で言うなら、「のび太、普段は弱虫なのに、映画版では健気に勇気を振り絞って戦う」的な萌えだ。
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