人間社会を破壊した「火の七日間」は巨神兵という破壊兵器によってもたらされる。これは核戦争のことであり、「腐海」の毒が人間を死に至らしめるのは放射能による汚染を意味しているように受け止められるが、これは水俣病、水銀による汚染を示しているという。

 宮崎駿が東映動画に入社し、アニメーターとして活動し始めた1960年代に日本は高度成長期による重化学工業化が進められ、各地で公害病が発生していた。

 工場が出す廃液に含まれていたメチル水銀に汚染された魚貝を食べた人々が次々発症し、死に至った。漁師たちの働き場は死の海と化したのだ。もう海で魚は取れない……そう思われたが、数年後、海には魚や貝が戻ってきた。

 海中の泥からはなんと水銀を浄化する能力を持った細菌が発見されたという。この自然の驚異に深い感銘を受けた宮崎は、劇中に害毒とされている腐海は逆に自然を復活させているという展開を盛り込んだ。