人間はこういう顔を表情筋だけでできるのか。キンタロー。の顔芸を見ていると、そんな驚きさえ覚える。そして、その驚きが意外さを生み、笑いにつながる。見ている側が想定している顔芸の水準を乗り越えてくる。面白い顔芸を見る、という設定でそれなりに上がっているはずのハードルを、表情筋だけで飛び越えてくる。

 キンタロー。の顔芸をたとえるなら、顔に落書きをしたような顔と言えるだろうか。あるいは、顔面プロジェクションマッピング。彼女はその顔にさまざまな表情を変幻自在に投影する。

 そんなキンタロー。は、印象に残るワードは特に残さない。ただ、面白い顔をするだけ。そしてその顔が画面と網膜に強烈に焼きつく。そんな芸人は現在ほかにあまり類例がないだろう。そして、そんな彼女のさまざまな表情を映し出す顔は、トーク中心、ワード中心の現代のテレビバラエティの傾向も、投影しているのかもしれない――みたいに言うと、ちょっと批評っぽいかもしれない。