と、いろいろ考えてしまうわけだけれど、世相レベルで批評が嫌われているかどうかは別にして、批評を忌避する声をSNSなどで個別に見聞きするのは確かだ。お笑いに論はいらない、ただただ笑えるものが至高、客が笑えたという事実が正解、そこに第三者の言葉は必要ない。そんな声である。

 ただ、そういう主張もまた、お笑いについてのひとつの批評だろう。お笑いに論はいらないという論陣を張っているわけだから。たとえ無自覚であったとしても、論理が十分に構築されていないとしても、そこでは「お笑いとはこういうものだ」という主張が展開されている。

 誰もが作品への意見を気軽に発信できる時代だ、と言われて久しい。誰もが批評家になりうる。だとしたら、より面白い論を発信したほうがいいだろう、と私は思う。お笑いに論は必要ない、みたいな論は、あまり面白いとは思えない。

 ということで、ここではあえて、ただただ笑えるものについて論じてみたい。

「今おそらくキンタロー。さんが一番面白い。あのころの松ちゃんです」

 5月23日の『ランジャタイのがんばれ地上波!』(テレビ朝日系)で、国崎和也(ランジャタイ)はそう言った。