「最後の一押しとなったのは、鈴木氏自身の舌禍だったと思う。鈴木氏は五月下旬、週現の編集部員全員と個別面談を行ったのですが、ある男性社員との面談の場で『今は女性が強い時代なんだ。男は生きてるだけでパワハラ、セクハラ。〇〇(社員名)の存在自体もパワハラ、セクハラなの。だからお前が偉くなりたかったら、性別を変えて女になった方がいいよ。今の時代LGBTは最も権利が強いからね』と発言。これが知れ渡り、騒動が過熱したんです」
文春は鈴木を直撃した。
――面談時の発言について?
「今はこういうの『不適切』って言うんですね、僕知らなかったけど。まさか録音されていたとはね。でも本当に発言については反省している。会社にも、申し訳ない思いで一杯です」
長々と引用したが、あまりにも情けない不適切な騒動である。
私の時代はセクハラ満載の編集部だった。ヘアヌードのゲラを隠しもせず、そのまま女性に渡していたのだから。今だったらアウトである。
昔の編集部員(件の鈴木も一時いたことがあった)に逢うと、「おっかない編集長だったですよ」といわれるが、長い間編集長をしていたが、編集部で大声を上げたことはないはずである。
夜も校了などがなければ、夕方6時には編集部を出て、戻らなかった。あの頃はポケベルしかなかったが、ポケベルで呼び戻されたというのは、記憶ではほんの数回程度ではなかったか。編集部は各々が各々の責任で記事作りをしていた。
校了日の朝、全部やり直しといったことは何度かあるが、大声で怒鳴ったことはない。一人、大声で怒鳴り、若手の編集部員に、「お前の親の顔が見たい。ここでお前の親に電話しろ」と迫った次長がいた。部員は仕方なく電話をかけようとしたのを、私が、「そこまでにしておけ」と止めたことはあった。
その人間は数代後に編集長になり、今でいうパワハラをときどき起こしたが、編集部員ではなく、理不尽なことをいってくる上司に対してであった。
先週も書いたが、石井編集長は人間力が試されていると思う。部員を怒ったからといって、いい記事ができるわけではない。彼は構想力も人脈もあるから、自らスクープを狙いに行くのだろう。編集長がどう動き、どういう人たちと付き合い、どのようにスクープを取るのかを、部員たちは見ている。まず自ら動いて模範を見せることだ。
私のときもそうだったが、できる編集部員はせいぜい3分の1だ。ほかのは期待しないことだ。そう腹を括り、編集部員を頼りにせず、毎週の現代は自分一人で作ってやる。そう覚悟すれば、編集部員を怒ることなどしなくなる。
編集部員たちは、そんな編集長を見て育ち、いっぱしの編集者になっていくのだ。重しが取れ、青空が広がった現代がどんなスクープや特集記事を見せてくれるか。楽しみに待っている。