さて、6月20日午後11時26分。これが一家の闇が暴かれていく合図だったと、文春が書いている。

 老婆のように見えたのは兵庫県神戸市西区の賃貸住宅に住む穂坂由美子(57)だった。彼女が保護されたときすでに、同居する孫の修(なお=6歳)は、激しい虐待を受けた末、惨死していた。修を死に至らしめた上、亡骸をスーツケースに詰めて草むらに遺棄したのが、由美子の4人の実の子供たちだったというから驚く。

 6月22日、兵庫県警に逮捕されたのは、修の母親の沙喜(34)、叔父の大地(32)、叔母で双子の朝美と朝華(ともに30)の4容疑者。今のところ容疑は母親の由美子に対する監禁と傷害だが、修の虐待死でも容疑者になるはずである。

 修の死因は外傷性ショックで、10回以上殴打された打撲痕や皮下出血が司法解剖の結果、認められたという。

「四人はそれぞれ身勝手な供述をしているが、総合すると、由美子さんに対する容疑や修君への暴行、死体の遺棄などを指示したのが大地。四人が家を開けた後、由美子さんは自宅から逃げ出した」(捜査関係者)

 穂坂家が現在の住宅に住み始めたのは約10年前だそうだ。修の「助けてください!」という悲痛な叫び声が幾度も聞かれたという。

 しかし、母親の由美子も、かつては鬼母であったようだ。一家をよく知る住民がこう打ち明けている。

「男の子の祖母は被害者となっていますが、あのきょうだいが小さい頃、彼女に虐待されていたのは、有名な話でした」

 一家が町の市営住宅に越してきたのは、姉妹がまだ幼い頃のことだ。父親の姿はなく、当初から母子家庭。怒声と叫び声が響き渡る修羅の家だったという。

「尋常ないじゃない声で『グズが!』『アホ!』と聞こえ、何かを叩くような音の後に『ぎゃああ!』と叫び声がする。それが毎日のように続いた」(別の住民)

 そんな家でも修の発育状況に問題はなかったという。「人懐っこい子で、『お母さん大好き』と言っていました」(現場近くの住民)

 状況が一変したのは昨年秋頃、戻ってきた大地の命令口調が家の外まで漏れて響いてきたそうだ。

「沙喜は妊娠時、『養育に不安がある』と市に相談していたため、もともと一家は見守りの対象だった。ただ市が認識していたのは、五人家族。行政が気づかぬうちに大地が六人目として同居を始め、一家を支配していたのです」(行政関係者)

 親が子供を虐待し、今度は子どもたちが親や小さな子供たちを虐待する。まさに修羅の家だが、亡くなった子供が哀れである。