「本人とは似てもに似つかない写真がカードに使われる例が増えているんです」

 という現場の声があると新潮が報じている。

「今後、これが身分証明書として使われて大丈夫かと心配になりますね」

 そう嘆くのは東海地方のさる地方自治体でマイナンバーカードの業務補助員として働く女性だという。

 その上、交付作業自体にも難があるという。

「一人3分以内を想定し、それ以上にはならないようにとの指示を受けている。うちの役所では多いときには150人も交付した日があります。それくらいのペースでさばかないと進まないですからね。写真について尋ねたりしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまいますよ」

 新潮曰く、カップラーメンを作るほどの時間で大事な『身分証明書』が交付される。それが今後、本人証明の唯一の手段だったら……実に恐ろしい。

 続けてこう明かす。

「現場にいて困るのは、窓口で“一体何のメリットがあるのか”と聞かれた時。コンビニで書類が交付できますよ、くらいしか答えられない。『持っているとメリットがあるカード』という触れ込みは、保険証との一体化によって『持っていないとデメリットがあるカード』になってしまっている。メリットがあるから、ではなく、デメリットがあるぞと脅して交付を迫る現状に疑問を感じながら仕事をしています……」

 マイナポイント付与という「アメ」、従来の保険証を廃止して、一体化させるという「ムチ」で交付数は現在、人口の75%近くに当たる9200万枚にまで達しているものの、5月以来、コンビニで住民票の写しなどの交付を受けようとしたら、別の人のものが発行された、マイナ保険証に別人の医療情報が誤って登録されている、公金受取口座が別人のマイナンバーに登録される、マイナポイントが別人に付与されたといったトラブルが次々報道されている。

 国民の不安は高まり、各報道機関の世論調査でも内閣支持率は続々下降。NNNと読売新聞の調査では、41%と前回から15ポイントも急落する始末だ。岸田総理の解散戦略も練り直しを迫られるなど、政局にまで波及している。

 また新潮によれば、彼らが口にしない不都合な事実があるという。

「一連のトラブルには、デジタル庁の抱える構造的な問題があると思います」

 そう述べるのは、経済ジャーナリストの磯山友幸である。

「デジタル庁は民間のデジタル人材を積極的に登用し、マトリックス型と言って、“縦”だけでなく、プロジェクトごとの“横”の繋がりを強化した組織を構築しています。しかし、そのために情報共有が不十分の面があり、かなり前にトラブルが認識されていたにもかかわらず、改善が遅れてきた。こと現場のミスで済ませていい問題ではありません」(同)