ところが、「あの時」からしばらくは、凍りついたような時間が流れることになります。以前も少し書きましたが、神澤は議員会館の事務所で事務作業をしていました。
選挙中で陳情客もなく静かで、「ランチはどうしようか」なんて話をしていた、11時半過ぎに廊下から女性秘書の悲鳴のような叫び声が聞こえました。 何だろうと思ったら、近くの事務所の秘書が「安倍さんが撃たれたって! テレビつけて!」と駆け込んできました。
「撃たれた?」
言葉の意味がわからず、とにかくテレビをつけると「安倍元総理が銃撃された」と報道されていました。しかも、「心肺停止状態」とありました。まったく信じられませんでしたが、テレビでは現場の映像が繰り返し流されています。
事件を受けて各党が「選挙活動停止」を指示したので、秘書たちは集会の中止などの連絡に追われながら、元総理のご回復を祈りました。自民党重鎮の議員事務所の秘書に様子を聞くと、「問い合わせがどんどん来てるけど、何がなんだかわからない。報道の方が早いよ」と困惑していました。
政治家に対するテロ行為は過去に何度もあり、まったくの想定外ということでもないのですが、銃で撃たれるなんて、秘書人生で考えたことはありませんでした。
死亡の報道は午後5時過ぎとなりましたが、それまで「日本の最先端の医療技術なら安倍さんを助けられる」「参院選が終わるまでは訃報を国民に知らせないようにするかも?」などと考え、街宣活動の再開の指示を待っていました。いろんな思いがあったのですが、死亡を伝える報道を見て「嘘でしょ……」というつぶやきとともに、すべて消え去りました。
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