◆過ちが裏切りなのではない、嘘が裏切りなのだ

 朝からそんなことがあった陽子は、この日、心乱れる一日を送り、仕事帰りに芽衣(結城モエ)のバイト先のバーに寄る。芽衣に夫を尾行してもらったことで夫の浮気が発覚したという経緯があるのだ。

 そのバーで再会したのはその日、朝一番でクリニックに来ていた男性。理央のせいで順番が狂い、診察することはできなかったのだが、彼は脳腫瘍があって手術もできない状況だとわかっていながら、怖くて言えないまま結婚してしまい、妻が妊娠したところで現在、苦悩していた。陽子は「嘘は裏切りです」と断定する。

 その後、芽衣がバイトを休むという連絡が入り、陽子は彼女の家に行ってみる。懸念したとおり、暴力彼氏からDVを受けていた。男に啖呵(たんか)を切って芽衣を救い出したが、彼女は「私が見捨てたら彼は本当にダメになってしまう。私が立ち直らせる」と言う。DVを受けている女性ならではの思考に、彼女は陥っていた。別れなさいという陽子に、芽衣は「そんな簡単なもの?」と疑問を投げかける。

 過ちが裏切りなのではない、嘘が裏切りなのだ。そう思いながらも、芽衣の言葉で自分が昂太と別れたくない気持ちになっていることも自覚した。