そこに東野は「ごめんなさいね」と割って入りながら観客のコメントを待つ。観客が「(ギャロップさんは)自分の体の特徴を活かしつつ……」と少し面白いことを言うと、東野は「彼のお葬式のこと考えるとね」とギャロップのネタのなかに出てきたくだりを交えつつ笑いに変え、すぐに「テンダラーさんは?」と振る。慣れていない観客をサポートしながらコメントを前に進め、番組を進行するという点で、印象的なやり取りだった。

 ほかにも、囲碁将棋のネタについて「モノマネをせずに笑いをとるっていうのはすごいなっていうふうに私は思いました」と落ち着いて理路整然と語る観客に、「演芸評論家ですか?」とツッコミを入れたり。あるいは、「ギャロップさんは事実上の決勝って感じで、あの……」としどろもどろになった観客に、「ちょっと言ってる意味がわからない」とツッコミの形をした助け舟を出して一息つかせ、「……というぐらい、両方面白かったっていうふうに思いました」と審査コメントを軟着陸させたり。相手に合わせて押したり引いたりしながら、観客のコメントを引き出していた。

 芸人相手には容赦なく踏み込んで笑いに変えるところもありつつ、観客相手には支持的な構えで適宜介入しながらコメントを待つ。『THE MANZAI』がとても楽しい大会だったという印象を受けたのは、芸人たちのネタの面白さはもちろんのこと、そんな東野幸治の司会によるところも大きかったように思う。