他方で、司会の東野幸治。彼はもちろん司会として松本以上にネタへのコメントを避けていた。芸人たちとのやりとりで、番組を盛り上げてもいた。番組がそれほど悲劇性を強調したものにならなかったのは、見る者にドライな印象を抱かせる彼のキャラクターや、悲劇的に見えることにも容赦なく踏み込んで笑いに変える彼の手腕によるところが少なくないだろう。
特に、決勝戦でマシンガンズの結果が出たシーン。これはもうギャロップの優勝だなと誰もが思ったところで、「マシンガンズの得点はいかがですか?」とニヤニヤしながらギャロップ・林に聞けるのは、そしてその林から「……うれしいです」のひと言を引き出して笑いにできるのは、東野をおいてほかにいないだろう。
東野については、特筆すべきは観客とのやり取りだろうか。今大会の特徴は、観客だけが審査員を務めたことにある。観客は1人3点を持っており、とても面白ければ3点、面白ければ2点、面白くなければ1点を各組に投じるが、それだけでなく、審査後にコメントを求められていた。各人に審査への緊張感と責任をもたせるための制度だったようだ。が、テレビの電波に自身のコメントが乗ることを同意したうえで席についているとはいえ、そこは一般の人たち、声が震えていたり、しどろもどろになったりする人もいた。
たとえば、テンダラーとギャロップの対戦で、「どちらのネタも面白かった」などとコメントした観客に対し、宮司愛海アナウンサーが「それぞれについて感想いただけたりしますか?」とさらに突っ込んで聞いていた場面があった。番組の制作側の意図としては、おそらく、その後の審査が“みんな違ってみんないい”的なものに流れることを避けるねらいがあったのではないかと推察する。が、聞かれた側としてはプレッシャーが大きいだろう。