現代でも他人事ではない、子どもへの重責
劇中で山田杏奈演じる少女・凛に押し付けられた役割は、あまりにも理不尽なものだ。彼女には母親がおらず、その役割を一手に引き受けるような責任感も感じさせる。
だが、本来は子どもにそのような重責を負わせるべきではない、ということは明らかだ。その当たり前のことを当たり前にさせてくれない異常な慣習と、そもそもの貧困を起因とする差別的な言動は、福祉のシステムがあるはずの現代社会でも、残念ながら決して他人事ではないと思い知らされてしまう。
そんな凛が取った行動は「逃げる」ということ。それも、本来であれば人間が生きることも困難な山の奥へと、だ。人間の社会に迎合することができず、森の中の暮らしへと身を置こうとする流れは、アニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』を思い出したりもしたが、もちろん普通の少女にすぎない彼女が、自然の中で穏当な生活が送れるはずもない。
そこから“山男”に出会ってからの展開は実際に観てほしいので秘密にしておくが、なかなに刺激的かつ、安易な予想をさせないツイストの効いた展開の連続でありながら、個人的には「こうなる」ことにあらゆる意味で納得できた、ということも告げておこう。
それもまた、何百年の前の村に限らない、閉鎖的なコミュニティの浅ましさ……というよりも、もはやバカバカしさを皮肉っている、ダークコメディ的とすら思えるのが面白かった。日本でもヒットした、同じく村を舞台にしたホラー映画『ミッドサマー』を連想する人もいるだろう。
【こちらの記事も読まれています】