映画『山女』が6月30日より劇場公開されている。本作で紡がれるのは、柳田國男の「遠野物語」に収められた民話に着想を得たオリジナルストーリー。『リベリアの白い血』と『アイヌモシリ』で各地の民族にフォーカスを当ててきた福永壮志監督が、NHK連続テレビ小説『らんまん』の脚本を手がけた長田育恵を共同脚本に迎えて作り上げている。

 その大きな見どころは、若手俳優の中でも抜きん出た実力と唯一無二の魅力を持ち合わせる山田杏奈を主演に迎えての、おぞましくも身につまされる“村社会”がこれでもかと描かれていることだろう。さらなる特徴を解説していこう。

同調圧⼒や差別意識がはびこる村社会の浅ましさ

 舞台は18世紀後半の東北の村。日本各地が天明の大飢饉に見舞われる中、17歳の少女・凛(山田杏奈)は村で間引きされる赤ん坊を川に捨てる役目を背負い、家族は村人から露骨な差別を受け続けていた。とある出来事をきっかけに、自ら村を去った凛は森の中で“山男”に出会うのだが……。