あえて下世話な言い方をすれば、本作は「オラこんな村イヤだ」もののひとつ。直近ではDisney+で配信中のドラマ『ガンニバル』、Netflixで配信中の映画『ヴィレッジ』でもそうだったように、閉鎖的な村社会での、集団での同調圧力や差別意識、はたまた貧困や格差や搾取といった悪しき社会構造が、良い意味で嫌らしく描かれているのだ。

 さらに辛いのは、その差別や抑圧が次の世代にも延々と続いていくことが示唆されていること。主人公である凛の家族は、先先代が火事を起こした責任から田畑を奪われ、卑しい身分に貶められており、その後に子どもが生まれても、なおも差別され続けることがはっきりと告げられるのだから。

 凛が自ら村を去る理由も、「もうここでは生きていけない」と思ってしまうことも致し方ない、絶望的なものだった。永瀬正敏演じる父親の言動が何か何までひどいし、もちろん極端ではあるのだが、それは現代社会でも決して他人事ではない、人間社会の縮図として捉えられることも、良い意味で苦しかった。