◆本作が残す余韻とは

『あなたがしてくれなくても』特別編より ©フジテレビ
特別編より
 最終話の翌週に放送された特別編では、主人公・みちの後悔混じりの心境がとうとうと語られる。

 離婚したはずの陽一がやっぱり大切な人だったと再確認する構成だ。なので新名は基本的にみちの回想で顔を出すばかりで、あの空白期間に彼がどんなことを考えていたかは描かれない。

 ということで、「はい」の謎は謎のまま残されることになる。でも消化不良にはならない。むしろよりよい余韻にひたることができる。

 ナット・キング・コールが1950年に全米チャート8週連続1位に輝いた「Mona Lisa」の歌詞を思い出そう。

「For that Mona Lisa strangness in your smile」(筆者和訳:あなたの微笑みには、あのモナリザの奇妙さがあるから)

 一度目から二度目の「はい」へ。新名の感情として「奇妙さ」(strangness)が増している。

 すべてはモナリザのような新名のあの微笑みに隠されたまま。本作が残す余韻とは、岩田が最終的に新名役に願掛けでもしたようなモナリザ・マジックだったという。アッパレ、岩ちゃん!

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu