◆名場面の箱詰めのような最終話

『あなたがしてくれなくても』最終話は、それまでの話数とはかなり異質な雰囲気だなと思った。冒頭からいつも以上に周到な演出が施され、俳優の演技が驚くほどさえわたっていたからだ。

 岩田剛典扮する新名誠が走っていく。吉野陽一(永山瑛太)が店長のカフェに入店。カウンター席に座り、アイスコーヒーを注文するまでの流れるようなリズム。

 テレビドラマの域を超え、完全に映画のテンポ感だ。第1話と2話以降は別の監督が演出を担当したが、最終話で再登板した西谷弘監督、さすがの演出術だと思った。

 カフェ場面の後も恐ろしいくらい素晴らしい場面が続く。冒頭から開始15分ほどで、すでに名場面の箱詰めのような状態。クライマックスへ向けてこんなアクセル全開で、この先いったいどうなっちゃうの? と心配になるくらい。

◆空白の数ヶ月間を省略した理由

 最終話を見終えたら今度は翌週に特別編が放送されると告知される。

 へ? まだ終わりじゃないの? もちろんドラマ世界が続くことは飛び上がるくらい嬉しいが、心地よくも拍子抜けするような感覚でもあった。

 でも、なるほどそうか。最終話のあの妙なテンポ感は、要するにこの特別編放送を見越した上での演出だったわけだ。なにせ特別編で描かれるのが、最終話までの空白の数ヶ月間なのだから。

 この期間がすっぽり省略されているがために、最終話ではアクセル全開感がすさまじい勢いに映ったのかもしれない。そして、筆者にとってはもうひとつ重要な謎が解き明かされることにもなるのかと思わず期待を......。