──リトルシアターでの下積みはどんなネタをしていたんですか。

街裏:ベタなことを全部やりましたね。観光客とかお年寄りが多い劇場なんで、本当にわかりやすいことをしないとウケない。例えば「僕はお笑い芸人で、こうやって売れてないと『お金ないんでしょう?』とかって言われるんですけど、実は僕、お金持ちなんですよ。ビルも2つ持ってるんです。……上唇と下唇なんですけどね」とか言うと、みんな笑いはるんです。でも、こんなこと今までの自分だったら絶対言いたないんですよ。

 そんなベタなこと言うのは、それまでの自分だったら自意識が許さなかった。上唇と下唇でウケるなんて恥ずかしいんですよ。でも、浅草リトルシアターって、いわゆるお笑いライブシーンとは隔絶した離れ小島だから、そういうベタをやっても、誰にも後ろ指さされない。それでやれてましたね。

──そこでベタの大事さを学んだ。

街裏:そうです。ほかにもお客さんとコールアンドレスポンスしたりしてました。「僕は英語力が?」「ない!」、「学力も?」「ない!」、「街裏ぴんくは才能が?」「ない!」「誰が才能ないねん!」みたいな(笑)。お客さんに声出させると、会場がわっと盛り上がって、そのあとの漫談もウケやすくなるっていうのはここで学びましたね。ここで話術の基礎を学んだんで、それがなかったら今のウソ漫談も全然ウケてなかったと思います。