「この世界はほんのひと握りの偉い人が、その他大勢の偉くない人を支配することで構築されています。ではここで問題。偉くなるためにはどうすればいいのか。今夜は偉くなるためのハックをご紹介します」
それを聞いた観客が一斉に拍手する。もうこの導入からすでになんだか胡散臭いわけだけれど、もちろんユースケのセリフは台本通りで、胡散臭いセミナーの司会ような役回りを演じているすぎない。が、バラエティ番組に出るときのユースケは普段からどこまで本気なのかよくわからない言動が印象的だ。そんな彼が司会を演じるものだから、虚実はより一層曖昧になる。
番組では会議に勝つためのハックとしてさまざまなものが紹介される。たとえば「それってあなたの主観ですよね」などと相手の意見を個人の意見にすぎないと決めつけ、あたかもワガママを言っているかのように印象づける技は「Only You(オンリー・ユー)」と呼ばれる。「○○とはどういうことなのか具体的に説明できますか。簡潔な言葉で」などと、曖昧な言葉の定義の説明を相手に求め、うまく答えさせないことで場を掌握する「Definition Counter(ディフィニション・カウンター)」と紹介される。
あるいは、質問者の意図をあえて曲解することで話の論点をずらし回答をはぐらかす「Rice Logic(ライス・ロジック)」。ホワイトボードに三角形を描いてその頂点を丸で囲んで適当な英語を書けば何かを言っているように錯覚する「Pyramid Power(ピラミッド・パワー)」。なんだかどこかで見聞きしたようなレトリックが、次々と解説されていく。その解説がなんだか皮肉っぽくてニヤリとする。
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