「映画監督とは職業じゃない。罪名だよ」

 映画監督とは、夢という嘘で人の人生を狂わせる罪人たちの呼び名だったのだ。映画監督になった者も、映画の世界に憧れた者も、その周囲にいる者も、みんな苦しみ続けることになる。自分が追い掛けてきた夢の正体を知らされ、浩平の頭の中の理想像はこなごなに砕け散る。

髙橋「これも加藤さんたちが書いた脚本に、最初からあった台詞です。あまりにも刺激の強い言葉です。実際、僕も思い悩み、30歳、40歳と節目の年齢には転職することを考えました。でも、踏ん切りがつかないうちに新しい現場の仕事が入ってしまい、今に至っています(苦笑)。やはり長年、映画業界で暮らしていることもあって、この業界での仕事が体に馴染んでしまっているんです。もしサラリーマンに転職しても、体か心がパンクして、倒れていたかもしれません。余裕のある生活ではありませんが、好きな仕事を続けられているのは幸せなことなのかもしれません」

 髙橋監督がプロデューサーを務めた作品は、中村倫也がパンクロッカーに扮した主演作『SPINNING KITE』(11)、篠原ゆき子がスランプ中の作家を演じた『ミセス・ノイズィ』(19)、のんが歌手デビューを目指す『星屑の町』(20)など、主人公たちは人生の扉を開けようと懸命にもがいている。監督デビュー作『RED HARP BLUES』や『渇水』の主人公もそうだ。