先週の日本からのビッグニュース、安倍総理の辞任に関するニュース速報はイギリスでも即時トップニュースとして取り上げられました。総理の辞任会見をご覧になった方も多いかと思います。

通訳者としては、会見を聞くときはついついボソボソ訳語を考えながら聞いてしまったり、そのあとどんな風に訳されたのか、英語報道されたのか気になるのは私だけではないかと思います。

そこで今日は「慣用表現」について考えてみたいと思います。

まず「慣用表現」「慣用句」とは何でしょうか?

色々な定義がありますが、ここでは通訳・翻訳者の立場から「直訳では通じにくいような比喩などを使った言い回し」とします。

「時は金なり」Time is moneyのように慣用表現でも定訳が定着していればあまり訳には困りません。けれどもたいていの場合は、文脈に合わせて意味を訳した方が通じやすいと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大で数カ月前によく聞いた表現の一つは「対岸の火事」。「最初は中国/アジアの問題で自分に影響が及ぼされるとは思ってもみなかった」という文脈で使われていました。「対岸の火事」はどう訳しますか? 英辞郎も研究社『新和英大辞典』もトップに掲載しているのは a fire on the other side of the riverという直訳です。通じないこともないでしょうが、We thought it was someone else’s problemとか、We thought it was nothing to do with usのように意味を訳したほうがすんなり理解されるように思います。ちなみにa fire on the other side of the riverは、英語の慣用句としては使われていません。

では、安倍総理の辞任会見で使われた「断腸の思い」はどうでしょうか? これは既にツィートしましたが、英Skye newsでgut-wrenching が見出しになっているのを見てビックリしました。

ここでは「断腸の思い」は「とても辛い」という意味であり、総理の病状を考慮すると直訳のgut-wrenchingだと揶揄しているようにも受け止められます。heart-breakingとか、extremely painfulのように意味を訳したほうがよいのではないでしょうか。困難な決断をする際に使われる英語の慣用表現ではwith a heavy heartがあります(例:The decision was made with a heavy heart)。いずれにしても状況を判断して、訳語にも心配りをしたいものだと思いました。

ところで英ジョンソン首相が4月に新型コロナウイルスに感染して集中治療室で治療を受けていたときは、国民が一つになり首相の回復を祈りました。ふだんはMarmite character(第19回・第82回 参照)と言われ「熱烈な支持派」と「毛嫌い派」に二分されるジョンソン首相ですが、この時期は後者からもGet Well Wishes(お見舞いの言葉)が送られていたのが印象的でした。

ジョンソン首相と言えば、重体になった要素の一つは「太りすぎ(I was too fat)」ということで現在パーソナルトレーナーをつけてダイエット中(参照記事)。国民にも肥満対策を呼びかけています。

ジョンソン首相、数か月後にはスリムで健康的になるのか楽しみですね。そういう私も半年の在宅勤務で気が付いたら少しずつ体重増加。。。私もダイエット頑張らなければ!

2020年8月31日

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