離婚の原因として法的に認められるものは?

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協議や調停によって離婚の合意が得られない場合、最終的には家庭裁判所で離婚を求める訴えを起こすことになります。

民法770条では「法定離婚原因」として、次のような事情がある場合は、離婚訴訟を起こすことができると定められています。

1.配偶者に不貞行為があった場合

「不貞行為」とは、配偶者以外の相手と肉体関係を持つことを指します。肉体関係のないままデートを重ねたり、スキンシップ程度の関係性、いわゆる「心の浮気」などは不貞行為に当たらないとされるので注意が必要です。

一方、風俗通いは基本的に不貞行為とみなされると考えてよいでしょう。「気持ちが入っていないからセーフ」などという言いぐさは、法の前では何の意味もありません。

2.配偶者から悪意の遺棄があった場合

夫婦は同居し、互いに協力し合い助け合って暮らしていかなければならないと法律で定められています(民法752条)。

配偶者として果たさなければならない義務に悪意をもって違反した場合、その行為は「悪意の遺棄」とみなされるのです。

具体的には、働ける状態にあるのに働かない、生活費を渡さない、家から追い出す、浮気相手と暮らし始める、正当な理由なしに家から出て行くなどの行為が「悪意の遺棄」に該当します。

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3.配偶者が3年以上、生死不明の場合

民法では、失踪した人が7年間生死不明となっている場合、失踪宣告により法律上死亡したものとみなすことができます(民法30条)。離婚を望む場合は7年を待たず、3年で離婚請求できるとされています。

生死不明とは、単に連絡が取れないというだけでは足りません。警察に捜索願を出す、戸籍を追跡するなど、「居所を突き止めるためにできるだけのことはした」という事実があることが前提となります。

4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合

夫婦間には相互扶助義務があるため、どちらかが身体的・精神的な不調に陥ったときもできる限り助けあって生きていくのが基本です。

精神的な疾患が法定離婚原因と認められるのは、夫婦関係を維持していけなくなるほど重症で、なおかつ回復の見込みがない場合に限られます。

ただそのような精神障害が法定離婚原因であるとして離婚請求が認容された判例は、他の原因と比べて圧倒的に少ないようです。

5.その他、結婚を継続できないような重大な理由がある場合

身体的・精神的DV、虐待、犯罪行為、極端な浪費、セックスレス、性格・価値観の不一致、愛情の喪失、相手方親族との不和などの理由で、夫婦関係が修復できないまでに破綻してしまったときには、法定離婚原因と認められる場合があります。

ただし、1~5にあてはまる理由があれば必ず離婚できるというわけではありません。裁判で「この夫婦はまだ関係性改善の余地がある」と判断された場合には、離婚が認められないことに注意してください。

有責配偶者からの離婚申し立てもあり得る

これまでは浮気やDVという離婚の原因をつくった側(有責配偶者)からの離婚の申し立ては認められないとされていました。これは、浮気されたうえ、一方的に捨てられたとなったらあまりにも酷だという判断が根底にあります。

ただ一定の条件を満たしたうえで例外的に認められるケースも出ていることもあり、離婚の原因がどちらにあるにせよ、もはや完全に破綻してしまった夫婦関係を無理に継続させる必要はないと考え方が変わってきています。

別居期間が長きにわたっている場合や養うべき子どもがいない場合、離婚を申し立てられた側が独り身になっても社会的・精神的・経済的にやっていけると考えられる場合などは、有責配偶者からの離婚申し立てが認められる可能性があります。