「LGBTQに特化した作品ではない」への批判

 是枝監督は記者会見にて、英国メディアの「日本ではLGBTQ(など性的少数者)を扱った映画は少ないのでは」との質問に、「LGBTQに特化した作品ではなく、少年の内的葛藤の話と捉えた。誰の心の中にでも芽生えるのではないか」と答えた(毎日新聞の記事より引用)。

 これに対し、LGBTQを扱った映画でクィア・パルム賞を受賞したのにも関わらず、それよりも別の広い範囲の物語であると作り手が答えることで、むしろ問題を矮小化しているのではないか、LGBTQの当事者を傷つけてしまうのでは、などと批判的な声が上がっているのだ。

 先んじて言えることは、是枝監督および脚本を担当した坂元裕二は、安易な考えで作品内でLGBTQを扱っているわけではない、ということ。例えば、東スポWEBの記事によると、是枝監督はLGBTQの子どもたちの支援をしている団体の方に脚本を読んでもらい演出上の注意点を聞き、子どもの彼らが自認や他認をする特定の描写を避けたほか、インティマシーコーディネーターにも現場に入ってもらったとも語っている。少なくとも、専門家の意見を聞き、センシティブな問題に対して真摯に向き合う姿勢でいたのだ。