◆「直哉と優斗の心の奥への旅」を描く理由

脚本家の金子ありささん
脚本家の金子ありささん
――本作は、カリスマ美容師の萱島直哉と消防士の白浜優斗によるいわゆる“バディモノ”です。金子さんが、男性同士のバディ・ドラマを書いたことが、新鮮に思いました。脚本を書く上でこれまでと違う点はありましたか?

金子:オリジナル脚本を書くときには、何年何月何日生まれ、どこどこ育ちなど、毎回一人ひとり履歴書を作ります。物語は「誰かと誰かの話」ですから今回もいつもと同じ作業でした。でも男性バディの関係性では、心の奥と奥がどう共鳴するのかをより深く探りました。

 優斗はこの顔の下に何を隠して生きてるんだろう。直哉の心の奥にはどんな傷があるんだろう。それが何話のどんな瞬間に共鳴し、噴出するのか。その意味ではミステリーの構築に似た作り方かもしれません。

――直哉と優斗の反目し合うキャラクター性が鮮やかです。第1話、命からがら救助する場面と第2話、崖を登る場面で手を握り合う瞬間があり、お互いにキュンとなるバディの関係性が描かれるのかと思いきや、そういうわけでもなく。

金子:この時点でお互いのことをどのくらい理解しているのか、何を知ってどう心が動くのか。そういうドラマにしたいと宮﨑プロデューサーと常に話し合っていました。

 激しいアクションやサバイバル、キュンとなる表層的な現象が少なく、じれったく感じた視聴者の方もいらっしゃったかもしれません。しかしやはりここは、山田さんと赤楚さんの味のあるお芝居を活かしたいと思いました。

 何よりこの作品は、直哉と優斗の心の奥への旅です。全10話を通じて辿り着くゴールを当初から考えていました。第3話で優斗から「立派だよ」と声をかけられて直哉の気持ちが溢れ、逆に優斗が立派なだけではない素の顔を第4話で見せる。そうした心の揺れ動きを繰り返しながら、二人が本物のバディになるまでの軌跡を描いています。