そんな「たりないふたり」は、まずはライブからスタートすることに。島を交えて漫才の打ち合わせはスムーズに進んでいく。山里はしずちゃん、若林は春日を際立たせるためにネタを一人で書いてきた。アイデアを出し合うことに二人は喜びを感じていた。

 ただ、それでもウケるかどうかの不安は拭いきれない。山里も若林も元の相方の個性が強すぎた。同じ漫才でも自分の笑いをぶつけるのと、個性豊かな相方を通して表現するのではわけが違う。

若林「このライブがウケたら何か変わる気がします」

山里「ドキドキだけど大丈夫。おもしろいから」

 若林にとってこのライブは、自分がこの先お客さんに受け入れてもらえるかどうか、今後の芸人人生において重要なターニングポイントだったのかもしれない。山里も少しお兄さんぶって強がってみたが、おそらく同じような思いだったのだろう。

 ネタ書き同士のコンビは通常なかなかうまくいかない。やりたいことも違うし、尊重しあっても細かいところでどうしてもズレが生じてしまうからだ。結果、妥協案を探り合うような格好で中途半端になることが多くなる。「たりないふたり」の場合は、元のコンビで自分を出しづらいストレスがあったのかもしれないし、期間限定のユニットだからと気楽にできたからうまくいったのかもしれない。

 ただ、12年も続いたことや楽しそうに漫才をしている姿を見ると、本当に相性が良くお互いへのリスペクトを持って楽しくやっていたのが伝わってくる。