ドラマとしてはいいシーンだが……。

『M-1グランプリ2008』で特大のインパクトを残したオードリーは一躍時の人に。憧れた“売れっ子芸人”を満喫する若林だが、春日(戸塚純貴)にばかり注目が集まり次第にじゃない方芸人になってしまう。春日の相方として一定の需要はあったものの、どの番組も似たような使われ方ばかりで、テレビの在り方そのものに疑問を持ってしまう。

 確かにあの時期のオードリーは、春日が住んでいた「むつみ荘」のロケばかりだったし、出てくる春日のエピソードも「ペットボトルに飴玉を入れてジュースを作る」「節約のためにシャンプーしながらコインシャワーに向かう」など似たようなものが多かった気がする。そんな中、若林のトーク力が評価され、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)がスタートする。

 一方の山里は、売れっ子となった相方・しずちゃん(富田望生)への妬みが加速。自分だけピンマイクを外されるなど、ありえない待遇を受けて心はズタズタになっていく。「自分に向いてる仕事をやればいい」と高山マネージャー(坂井真紀)が『スッキリ』(日本テレビ系)での天の声役を取ってくるも、「この仕事やって漫才師って言えます?」と拗ねてしまう。のちに実力を高く評価されるきっかけになった仕事なので、意外な反応だ。

 そんな山里の気持ちとは裏腹に、しずちゃんは高山マネージャーに山ちゃんへの感謝を漏らした。

「私から解散っていうことはないです。私は山ちゃんが拾ってくれたから今ここにいられるってのはわかってるし…」

 ドラマ的にはいいシーンだ。しかし、あえて言いたいが、気持ちはしっかり伝えてあげてほしいと感じてしまう。筆者は売れない芸人を10年ほど経験しており、お互いの本当の考えに気づけずに仲が悪くなったコンビを山ほど見てきた。売れている方がちょっと過剰なくらい相方に手を差し伸べないと、バランスはなかなか取れない。

 山ちゃんの場合は妬み嫉みがそのまま武器になった芸人なので、下手に歩み寄らないしずちゃんの対応は結果的に正解だったのだが、元々そういう狙いもあったのだろうか。そこら辺は本人じゃないとわからない部分だ。