あの頃、父の目には何が映っていたのだろうか?

 子どもの頃には気づかなかった父親の気持ち。自分も大人になり、親になった。そんな立場から改めて当時の父の姿を見ると、その眼差しの中には悲しみがあった。あの時、父は何を考えていたのだろうか……。

 今作は、言ってしまうと、ただの他人のホームビデオを観ているような感覚になる作品で、淡々と断片的に物語が進むだけで、退屈に思う人も多いかもしれない。それなりの年齢になっていないと気づけないような、特に若い世代にはなかなか共感しづらい部分も多いかもしれない。

 ただ、刺さる人には刺さる作品であることは間違いなく、少なからず自分の親のことを想像してしまうはず。

 カラムとソフィは親子ではあるが、両親は離婚しており、ソフィは母親と一緒に住んでいる。娘も思春期に差し掛かり、今後何回会えるかもわからない。つまり、カラムとソフィが一緒にいられる時間というのは、かなり限られている。だが、なぜこれが最後のようにも感じられるのか、それがなぜなのかは明確には語られない。