メスカルは脚本の段階から積極的にキャラクター構築に参加することで、メスカルの想像するカラム像と、ウェルズの想像するカラム像を擦り合わせた。未来を見ていながらも、最後の時を覚悟しているかのような、まるで光と闇が共存したカラムというキャラクターを作り出したのだ。

 また今作のソフィ役で女優としてデビューを果たしたフランキー・コリオの純粋さが溢れるような演技も重なることで、淡々としていながらも、重圧な父と娘の物語が完成したのだ。

【ストーリー】
11歳の夏休み。普段は別々に暮らす父カラムとトルコのリゾート地を訪れたソフィは、あと2日で31歳になるカラムにビデオカメラを向け、問いかける。
工事中のリゾート施設にたどり着いたカラムとソフィは、予約したはずのツインベッドの部屋ではなく、クイーンサイズのベッドのみが置かれた狭い部屋に案内されてしまう。やむなく簡易ベッドに眠ることになったカラムは、ソフィが眠りについたあと、バルコニーでひとりタバコを吸い、闇の中で踊る。兄と間違えられるほどに若く見えても娘思いの優しい父親であるカラムは、旅行のために最新の家庭用ビデオカメラを入手し、ソフィの背中に入念に日焼け止めを塗り、タバコは体に悪いと切々と語り、太極拳の護身術を教える。母親との暮らし、学校生活について話をしながら、かけがえのない親密な時間を過ごすふたりだったが……。