さらに、彼がひとりでやっているのは、テレビで見せる芸だけではない。
「朝に打ち合わせしたのよ。カット割り全部」
すべての芸を終えたあと、柳沢はそう語った。スタッフを集めた打ち合わせの場で、カメラのカット割りもふくめて、すべて自分で演出したらしい。彼がひとりでやっているのは、甲子園球場のあれこれの再現だけではない。カメラでどう映すのか、そこも自分でやることまで含めて「ひとり甲子園」であり「ひとり警察24時」なのだ。もちろん柳沢はピン芸人ではないけれど、これもまた、たったひとりで作品を世に出し、見る者に渡すための2倍の作業の賜物といえるのかもしれない。
「いい夢見ろよ。また見る日まで、あばよ!」
柳沢慎吾は、いつものようにそう言ってスタジオを去った。この去り際のセリフまで含めて柳沢劇場。ひとつのパッケージ。彼については、「テープを聞いてセリフを覚える竹内力」のモノマネも面白いので、ぜひ見てほしい。あと、柳沢慎吾の評については、内田有紀による「呼吸の回数よりしゃべる回数が多い方」(『ごごナマ』2018年2月6日)というのが好き。