このように『どうする家康』の信長は、近年稀に見るレベルのパワハラ系「オレ様キャラ」なのですが、岡田さんの堂々たる立ち居振る舞いには気品すら感じられ、1人の視聴者として完全に「信長節」に丸め込まれ、あまり嫌な気分にはならないのが不思議です。近年の大河ドラマでは、『麒麟がくる』において染谷将太さんが自意識を肥大化させて「怪物」になっていく信長を好演し、その鬼気迫る「奇怪さ」(※褒めています)には定評がありましたが、岡田さんの信長はギリギリのところで「カッコよさ」の範疇に踏みとどまっている気がしています。
ドラマ第21回の内容について蛇足ながら史実の観点で補足しておくと、亀姫(當真あみさん)が長篠への輿入れを嫌がったり、「設楽原の戦い」の前に織田・徳川間の「清洲同盟」が解消される危機にあったりという展開はドラマオリジナルで、史料からはそのような事実は確認されません。清洲同盟は、本能寺の変で信長が亡くなるまで末永く続いた、戦国でも稀な同盟でしたから。しかし、信長と家康は対等な存在と取り決めされていたにもかかわらず、次第に信長の家臣のような扱いを家康が受けるようになっていったのは史実も同様です。
さて、次回・第22回は「設楽原の戦い」と銘打たれているとおり、徳川・織田連合軍(2~3万)と武田軍(1万)の正面衝突が描かれるはずです。
この戦いにおいてもっとも注目されがちなのは、信長が当時としては桁外れな3000丁もの鉄砲を(一説に)3万の兵に携えさせ、突進してくる武田の騎馬隊を討ち滅したとする場面です。次回予告の映像でも、松平信康(細田佳央太さん)が「これが……戦にございますか?」と驚愕するセリフが聞こえてきますが、「新兵器」鉄砲の圧倒的な威力と、それを使いこなす信長の恐ろしさが描かれるのでしょう。