『めぞん一刻』的なひとつ屋根の下でのラブコメの楽しさ

 本作の実質的な主人公は2人いる。叔父の家に居候することになった高校生の直達(大西利空)と、いつも不機嫌そうだが気まぐれに美味しいご飯を振る舞ってくれる26歳のOLの榊さん(広瀬すず)だ。実は叔父の家はシェアハウスであり、そこにいるのは女装の占い師(戸塚純貴)や、海外を放浪する大学教授(生瀬勝久)などクセの強い住人ばかりだった。

 ひとつ屋根の下での男女の関係性もしくはラブコメが描かれることから、漫画『めぞん一刻』や『僕らはみんな河合荘』などを連想する方もいるだろう。いずれも個性豊かなキャラの関係性を見ているだけでも楽しいが、この『子供はわかってあげない』では“過去”にまつわるドラマも見どころになっている。

 実は、広瀬すず演じる榊さんは、過去のある出来事から「恋愛はしない」と宣言している。純朴な高校生である直達は明らかに彼女のことが気になって、淡い恋心を抱きつつあるのだが、クールな態度はもとより、恋愛自体を拒絶する彼女の心になかなか近づけないでいる。その“もどかしさ”を含む関係性が徐々に、あるいは劇的に変化していく過程が面白いのだ。

 なお、その過去のある出来事は関係性が複雑で、会話で初めて明かされた時は「どういうこと?」と混乱してしまうかもしれないが、その後に漫画家である叔父がイラストでわかりやすく示してくれるのも面白かった。その叔父を演じる高良健吾も天然ボケなキャラが親しみやすくてかわいいので、ファンは楽しみにしてみてほしい。