『美女と野獣』は人の知性に関する物語である。
「人と違っていても気にすることなんかない」という父親に育てられ、本を読みふけるベルは知性溢れる女性で、外見は恐ろしい野獣も書斎にあらゆる本があり、「ギリシア語で書かれたもの以外は読める」と嘯くほど教養がある。
ガストンや村人たちがベルやモーリスを蔑み、野獣を恐れるのは自分と違うものを理解しようとしないからだ。この世界では知性や教養は悪の象徴なのだ。
原作者ヴィルヌーブ夫人の書いた本で、野獣を示す言葉はbêteという。フランス語で野獣、もしくは知性に欠けている、という意味でもある。ヴィルヌーブ夫人はある男と結婚するが知性に欠けて浪費家であったため、離婚に至った。ヴィルヌーブ夫人が『美女と野獣』で言いたかったことは人の良さは外見ではない、内面にあるということよりも知性に欠けた男は野獣にも劣る! という、自身の経験に裏付けされた真実だったのだろう。
昨今の世界情勢でも知性に欠けた野蛮で粗暴な連中が、そこそこ良いだけの外見を利用し、デカい面して国政を牛耳っているのを見せられ辟易させられるばかりだ。そんな時、筆者は『美女と野獣』を見て「知性に欠けた男は野獣にも劣るって本当だな」とつぶやくようにしているのだった。ヴィルヌーヴ夫人よありがとう。