向上心が強い一部の劇団や役者を除いて、ほとんどの場合、仲間内でお客になったり演者になったり主宰になったり音響になったり照明になったりしているので、ただ知り合いが循環しており、新しい客層が増えることはないのだ。外部へのコミュニケーションが希薄なために小劇場界隈に漂うサブカル臭が拭えないのだ。

 ちなみに、小劇場界隈という小さな世界である程度の地位についたと勘違いした小劇場モンスターが、招待されることが当たり前、的外れなダメ出しをして気持ちよくなるというとんでもない客になる。

 一度、僕のツイッターのフォロワーの見知らぬ演劇関係者を僕の劇団のお芝居にお誘いしたことがあった。すると「僕は多忙なので招待以外の演劇は観劇しないようにしています」と返ってきて度肝を抜かれたことがあった。あの人は今頃なにをしているのだろうか。劇場界の衝撃的なことは山ほどあるので、それはまた別のコラムで書くことにしよう。

 上岡さんの話から、いつの間にか小劇場界の不平不満話に変わってしまった。失礼しました。兎にも角にも上岡さんのエピソードはカッコイイ。「客観視」と「引き際の見極め」こそが上岡龍太郎さんのカッコよさの根底にあり、これが一世を風靡し一時代を築き上げた芸人の凄さ。この上岡イズムはそう簡単に真似できるものでは無い。憧れとはそういうものなのだろう。