現在42歳になる石井裕一氏は、会社経営と並行して25家庭と契約を結び、レンタル父親を務めている。トラブルなどは起きないものだろうか。

石井「運動会などのシーズンは、1日に3つの家庭を午前、昼食時、午後と掛け持ちすることもあります。各家庭でそれぞれ違った理想の父親を演じているので、各家庭に入る前に確認するようにしています。子どもの名前は決して間違えないようにしています。テレビなどに僕が出ることは、依頼を受けた際に説明しており、納得してもらっています。子どもがもしテレビに出ている僕を見つけたら、『最近、お父さんはエキストラの仕事も始めたみたいよ』と答えてもらうことになっています。それほど出演しているわけではないので、意外とバレないものですよ」

 依頼者の子どもが大きくなっても、レンタル父親であることを自分からは明かさないのだろうか?

石井「10年以上、レンタル父親を続けている家庭がいくつかあります。長く依頼を続けていただくことは会社としてはうれしいわけですが、お子さんが結婚するなどのタイミングで打ち明けてはどうかと、依頼者であるお母さんには話すようにしています。打ち明けないままその子が結婚してしまうと、結婚先の家族も巻き込むことになりますし、孫が生まれたらレンタルおじいちゃんの役も務めることになりかねません。でも、ほとんどの依頼者は『本当のことを話すのが怖い』と躊躇されますね。僕が本当の父親ではないことに気づき、お子さんが家出してしまったこともありました。ごく稀ですが、『レンタルでも、お父さんはお父さんだよ』とうれしいことを言ってくれるお子さんもいます」