少なくとも2003年には文春による“セクハラ被害”記事について『重要な部分について真実であることの証明があったものというべき』と高裁で認められ、2004年に確定したにもかかわらず、以降も10年にわたって被害が続いたとみられているわけで、事務所はこの問題を軽んじ、何ら対策を打ってこなかった。大手メディアもこの問題をスルーし続けてきたわけだが、それはジャニーズ事務所によるメディアコントロールによって黙らざるをえない背景もあった。

 メディアがジャニーズに対して忖度し続けてきたのは、逮捕されたジャニーズタレントを容疑者ではなく『メンバー』と報じたり、他事務所の競合グループがなぜか特定の音楽番組に出演できなかったり、退所者が地上波に出演する機会がほぼなくなったり、大きな売り上げが見込めるジャニーズグループのカレンダー発売権を手にした出版社の週刊誌が今回の性加害問題に一切触れていなかったりするあたりからも、世間の人にもじゅうぶん伝わっている。先日は博報堂が発行する雑誌『広告』において、批評家の矢野利裕氏がジャニーズについて語る対談の中で『メディアの独占的なコントロールやハラスメントなどはその問題性を追及されるべき』と発言した部分が、『ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所への配慮の観点』から博報堂広報室長の判断で削除された騒動も話題になったばかり。

 中丸は“再発”について、『多分ないとは思いますけど、何か同じような大きいリスクを背負っている可能性も、もしかしたらあるかもしれない』と的外れなことを言っていたが、性加害問題が被害者との間で解決したところで、ジャニーズとメディアの癒着構造にメスを入れないかぎり、ジャニーズ事務所に沈黙を強いられるという意味での“再発”はいくらでも起こり得るし、むしろ“問題は解決した”と大々的なプロモーションがメディアで展開される未来が待っているだけでは」(前出・週刊誌記者)

 ジャニーズ事務所が「3つの対応策」を5月26日に発表したのを受け、NHKや民放各局はこぞって定例会見の場で今回の問題について言及したが、口をそろえて「前提として性暴力は許されない」「慎重に見守りたい」という発言に留まり、「なぜこれまで報道、検証できなかったのか」について語る場面はなかったようだ。テレビ報道でも、キャスターが「伝えてこなかった責任」について言及はしても、「なぜ伝えられなかったのか」にまでは踏み込んでいない。

 このまま、あくまで「創業者の犯罪と、それを認識できなかった事務所の組織体制」だけが争点として語られていくのだろうか。