一方で、売れていない芸人は楽しい。金もないしやりたくないバイトに時間を取られたりストレスもあるが、それ以上に希望があるのだ。

 売れたらこんなお笑いをやるんだ、憧れの先輩と絡むんだ、女優やアイドルとだって付き合える、現実を知らない芸人たちは、好き放題に夢を描ける。売れてなくても、意外とちやほやしてくれる人たちが周りにいたりして、自尊心だって保たれちゃったりする。希望に満ちた芸人は辛さよりも楽しさの方が圧倒的に多い。今話の若林はこの状態だったのだろう。

 しかし、これは「希望を持てたら」というのが絶対条件になってくる。何年も芸人をやっていると下からの突き上げがあったり、次第に自分が売れない現実が見えてきてしまう。こうなってしまうと地獄。金もないし未来もない。芸人を辞めようにも一般社会が怖い。中途半端に築き上げた現在を捨てるのが怖い。八方塞がりである。

 売れない芸人のほうが売れた芸人より楽しい、こういった側面は存在するのだが、売れないほうが良いということは絶対にない。

 最終回も近い第9話では、若林が「ズレ漫才」にたどり着く。ブレーク前の一番キラキラした状態のオードリーを拝めそうだ。