史実では、五徳から築山殿と信康が武田方に密通しているという告発文を送られた信長は激怒し、身内の監督責任問題を問われた家康は彼らを粛清せざるをえなくなる……という大事件が天正7年(1579年)に起きるのですが、本連載ではこの事件と人物関係にはさまざまな解釈が成り立つというお話を何度かしてきました。

 通説において姑息なチクリ役として描かれる五徳姫ですが、『どうする家康』においてもそのようなキャラクターとなる可能性が強まってきたようですね。ドラマの五徳は、武田との戦で負傷した徳川の兵たちの治療にもあたろうとせず、「このような汚い男どもに触れるなんてできません」と言ってのけたことで、救護班の中心として働いていた瀬名(有村架純さん)から「そなたも三河のおなごであろう!」と叱責されるシーンもありましたが、五徳は「私は織田信長の娘じゃ! 無礼者!」とまさかの口答え。なかなかに将来が案じられる問題児ぶりを見せつけていました。ドラマ公式サイトでは「信長やその妹・市に似て気品にあふれ、気が強いが、心根は優しい」と紹介されている五徳ですが、このまま完全な悪役となってしまうのでしょうか。演じる久保史緒里さんが上品な方であればあるほど、五徳も氷のように冷たく、取り付く島もないように見えてしまうのかもしれませんが……。

 さて、次回・第21回「長篠を救え!」では、ついに徳川・織田の連合軍と、宿敵といえる武田軍が激突した「長篠の戦い」に至るまでが描かれる模様です。

 次回のあらすじには興味深い一文がありました。