──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

 『どうする家康』第20回は、大岡弥四郎(毎熊克哉さん)の厭戦の思いを叫ぶ姿が印象的でした。相次ぐ戦に疲弊し、「皆もうこりごりなんじゃ。終わりにしたいんじゃ。だが終わらん。信長にくっついている限り、戦いは永遠に終わらん無間地獄じゃ!」と、やりきれない本音を吐露する弥四郎でしたが、彼の言葉には確かに一理あります。この当時、戦があるたびに、そしてその勝敗に関係なく、徳川家康の足元が大きく揺らいでいたことがうかがえるからです。ドラマもしばらくはつらい展開が続いていきそうです。

 弥四郎たち一味は「岡崎を救うため」に、弱き主君・家康(松本潤さん)から、強き主君・武田勝頼(眞栄田郷敦さん)に鞍替えすべく、謀反の大罪を犯すこともいとわずに立ち上がったのでしょう。しかし、彼らに対する五徳姫(久保史緒里さん)の反応には唖然とさせられてしまいました。五徳は事件の背景などまったく顧みず、弥四郎に父・信長(岡田准一さん)を侮辱されたと思ったのか、「このこと(=弥七郎事件)は我が父に子細漏れなくお伝えいたします。この者たちをしかと処罰なさいませ。この上なくむごいやり方でなあ」と静かな怒りを見せ、牢内の囚人たちだけでなく、松平信康(細田佳央太さん)と家臣たちにも微妙な空気が流れてしまっていました。