大事件は起きない周平の物語は、どんなクライマックスを迎えるのだろうか。家族との対話もチグハグなままの周平は、かつての教え子・南を連れて、北九州市の黒崎商店街を散策する。レトロな雰囲気のする喫茶店でお茶をする2人だが、ここで南が重大な告白をする。他人のリアクションの薄さを嘆いていた周平だったが、彼自身も年齢の離れた南に対し、彼女が期待しているような言葉をうまく返すことができない。
生き方を改めよう、真摯に人に向き合ってみよう。そう思い立っても、人間の性格は急には変われない。親子ほど年齢の離れた教師と元教え子の言葉のやりとりは、リアルさとシビアさの狭間で揺れ動きながら、ラストシーンへと向かっていく。起承転結という物語の流れからこぼれ落ちていく表情や仕草が、観ている者の胸をチクチクと刺す。
二ノ宮「起承転結に当てはめようとは考えていませんし、起承転結から外そうとも考えていないんです。映画全体のバランスは重視しています。心のささやかな動きを描きたいと思って、制作した作品です」
希望を感じさせるエンディングなのか、それともシビアな結末なのか。タイトルの『逃げきれた夢』も、どこか苦味を感じさせる。
二ノ宮「観ていただいたお客さんに、自由に感じてもらえればと思っています」
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