ところで、人を殺しておいて、生徒たちの前で同僚の教師と漫才をやり、笑うことができる人間とは、どんな精神構造をしているのだろう。

 2月24日、江戸川区の住宅街で叫び声が響き渡った。住民の派遣社員・山岸正文(63)が、顔や首を20カ所近く刺され、その後、死亡した。

 犯人はすぐに割れた。江戸川区立松江第五中学校の教師、尾本幸祐(36)だった。

 殺された山岸の家から中学校は歩いて3分ほどの距離。山岸から荷物を運ぶのを頼まれ、土足で入っていいといわれたなど、つじつまの合わない説明を繰り返し、自宅からは想定問答のようなメモも見つかったという。

 真面目な教師に見えたが、FXや競馬にはまり、多額の家のローンを抱え、犯行に及んだようだ。

 だが解せないのは、3人の子どももいて、特別支援学級の担任をしていて、評判のいい教師だったというのだ。

 漫才は、今年3月、3年生を送る会という催しで披露したものだった。

 失礼ないい方になるが、盗みに入っても大金が置いてあるはずのない家だったのではないか。これが成功すれば、次々に盗みに入ろうとしていたのか。

 心の闇とはよくいわれるが、後に残る妻や子供たちのことは考えなかったのだろうか。それほど闇が深かったということか。

 夕暮れ迫る東京銀座の宝石店で、若い3人組がガラスの陳列ケースを壊し、ローレックスなどの高級時計、金額にして2億3000万円するものを次々カバンに放り込み、逃げ去るまでに約2分。

 通行人も多くいたから、その一部始終はスマホで撮影され、ニュースで大きく報じられた。

 映画の撮影かと思った人間もいたようだ。だが、彼らが逮捕されるまでにそれほどの時間はかからなかった。

 逃走の車の運転手も含めてすべてが19歳以下の少年たちだった。

 はじめはルフィグループのように、闇バイトで集められた連中かと思われたが違った。暴走族の頭だという19歳の少年が主犯で、16歳の少年を使い、他の19歳、18歳を引き込んだようだ。

 16歳の少年は、大麻の売買などに加担させられ、逃げたがっていたが、19歳の暴力支配に怯えて、抜けられなかったという。

 強盗で、建造物侵入や器物損壊なども含めると、懲役5年以上、長くて10年以下になる可能性があるそうだ。

 だが、もし10年食らっても、19歳が29歳、16歳は26歳。その後の長い人生を生きていくのは至難である。また犯罪に手を染める可能性は大きい。こうした人間たちを更生させ、生きていけるような環境作りが必要だが、どこにもそんなものはない。