⑬竹野内豊と斎藤工

 劇中「政府の男」「情報機関の男」として登場する竹野内豊と斎藤工は、庵野作品の『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』に出演した役者だがそれぞれ「立花」「滝」という名前で、テレビ版のおやっさんこと立花藤兵衛とFBI捜査官・滝和也を想起させる。同じ俳優や役名の人物が登場するのは石ノ森作品にたびたび見られるスター・システムを彷彿とさせる。

⑭エンディング曲

 エンドロールではテレビ版の楽曲「レッツゴー!!ライダーキック」「ロンリー仮面ライダー」「かえってくるライダー」の3曲が続けて流れる。これは当時発売されたレコード『仮面ライダー ヒット・ソング集』の一曲目から三曲目までの順を入れ替えて流している。

『仮面ライダー ヒット・ソング集』は日本の特撮ヒーロー番組ではじめて、歌だけで構成されたレコードで、これが大ヒットしたことでヒット・ソング集は後続の番組にも受け継がれた。当時の楽曲をそのまま使ったのは、『シン・仮面ライダー』という作品を通して徹底されている「当時を再現する」狙いがあるのだろう。ラストが「かえってくる~」なのはその名の通り「かえってくる」という意味なのか?

 さて、以上のような元ネタが本作には込められているが、問題は

「なぜ、テレビ版やマンガ版からの引用が必要だったのか?」

だ。単にイースターエッグのごとく元ネタを入れているだけなら、マニアの遊びに過ぎない。本作が賛否ある理由として「オタクの元ネタ遊びなだけじゃないの?」という批判がある。

 確かに『シン・仮面ライダー』は歪な作劇で、

敵のアジトが発覚(どうやって見つけた?)→アジトに移動(どうやって?)→いきなり対決→「お前が来るのはわかっていた! まんまと罠にかかったな!」→からの逆襲

という見せ場だけが連続する。これはテレビ版が22分の放送枠の中で見せ場と見せ場の間を省略するという作劇の手法だったのだが、それすら完全に再現している! なんなら、テレビ版にあった「ちょっと安っぽく見える」演出すら、あえて取り込んでいるのだ。

が、『シン・仮面ライダー』は、そんなオタクの元ネタ自慢合戦なだけではない。