また、興味深いのが昨年、NHKとDisney+で放送された『拾われた男』との類似性である。同作は俳優の松尾諭の同名エッセイを原作とする1990年代以降を舞台にした青春ドラマだが、『だが、情熱はある』の企画も、プロデューサーの河野英裕が山里と若林のエッセイを読んだことをきっかけに思いついたものだった。

『拾われた男』には、松尾の出世作となったテレビドラマや映画のエピソードが登場し、松尾が付き人をしていた女優の井川遥が本人役で出演して、当時のエピソードをドラマ化していた。対して、『だが、情熱はある』では『エンタの神様』(日本テレビ系)等の2000年代のお笑い番組や、あの時代に活躍した芸人たちの姿が描かれる。

 また、松尾が1975年生まれ。山里は77年生まれ。若林は78年生まれと年齢が近いこともあってか、現在40代の男性が体験した90~2000年代を舞台にしたノスタルジックな青春ドラマとしても楽しめる。『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)や連続テレビ小説『舞い上がれ!』(NHK)もそうだったが、1990年代から現代に至る時代の流れを描いたドラマを作りたいという思いが、ドラマ制作者の間で広がっているのかもしれない。

 過酷なお笑いの世界で、若林と山里が精神的に追い詰められていく姿を観ていると辛くなるが、この辛さから目を逸らさずに描いているからこそ『だが、情熱はある』の青春は美しく見えるのだと思う。