三谷は制作発表会見で、物語を「サザエさん」に例えた。サザエが政子(小池栄子)だとすれば、頼朝(大泉洋)がマスオさん。義時がカツオで、ワカメが実衣(宮澤エマ)。時政(坂東彌十郎)とりく(宮沢りえ)が波平とフネさんで、タラちゃんに当たるのが、頼家(金子大地)と実朝(柿澤勇人)だ。すべてを見終わった今、いかに陰惨な話だったのかが、この例えでよく分かる。最初の頃は、家族のシーンが楽しげに描かれていたのだから…。歴史、神、運命の残酷さを感じずにはいられない。

 ちなみに、先日の第41回向田邦子賞の受賞記者会見で、選考委員の1人である脚本家・坂元裕二氏は「ジャンルも作風も違うのに、こんなに向田邦子さんを感じた作品は初めてだ」と発言していた。笑いながら話していても腹の中では別のことを考えているというのが、向田作品のすごみの一つ。作品のトーンが明るいのに、怖い。まさに向田邦子賞にふさわしい脚本だ。

【番組情報】

「鎌倉殿の13人」 
NHK(22年) 
出演:小栗旬、新垣結衣、菅田将暉、小池栄子、片岡愛之助/坂東彌十郎、宮沢りえ、大泉洋、西田敏行ほか