それはアダム・ウォーロックだ。ウォーロックの登場に関してはこれまでにも“伏線”が張られていた。本来であればサノスとの闘うさだめのキャラクターということもあり、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』よりも以前に登場させる予定だったのが、結果的にサノス亡きあとの今になって、とうとうというか、今さら登場したわけだが、完全に出遅れたキャラクターという感じがしてならないし、ヒーロー映画に向いているとは思えないウィル・ポールターが演じているというのも個人的には違和感がある。
しかし、監督のガンがうまかったのは、そんなウォーロックの出遅れ感、場違い感というのを作品の空気として反映させていたことだ。今作の中でウォーロックは明らかに“場違い感”がありながらも、最終的には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の世界観に馴染んでいる。
おそらくガンが今作で目指したことは、シリーズとしての完結というのは前提にありながらも、今後に続くキャラクターの引き継ぎだったといえるだろう。
ガモーラ、マンティス、ドラックス、ネビュラを演じた俳優たちは、今作で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を卒業することがわかっている(俳優がリキャストされる可能性はあるが)ため、ある程度の卒業や旅立ちらしい描写がされているが、ロケットやウォーロックといったキャラクターは、どういった形でも再登場が可能な余地を残している。
つまりガンは、今作が最後だからといって、徹底的に娯楽作として消費はしなかった。キャラクターのオリジンを描き、新キャラクターを馴染ませるという、一定の尺を使ってDisney+のドラマシリーズ枠で描くようなことをしているのは、ガンがマーベルから離れる“置き土産”となっているのだ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
監督:ジェームズ・ガン
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:クリス・プラット、ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼル、ゾーイ・サルダナ、カレン・ギラン、デイヴ・バウティスタほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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