他方で、プレイヤーの立場でありながら冷静に問題提起を重ねるminan(lyrical school)の「(…)お化け屋敷で先頭を歩くみたいに、舗装されていない道に轍を作るような気持ちで活動してきた(…)」からこそ「(…)アイドルカルチャーが、この先一体どのような変化をしていくのかは、ここから先のお互い次第だ」(P.146)という布告にはヒップホップの能動的かつ革命的なスタンスが露呈しており、奮い立たされる。
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同様の闘志はCOMA-CHI、valknee、あっこゴリラ、Daoko、chelmico、MARIAといった面々のインタビュー/寄稿らも痛切に伝わってくる。
ほかにも各論考の意義深さはいくらでも列挙できるが、ここではまず新田啓子「What’s This Madness in My Mind?――女性ラップが引き寄せるもの」の、とある記述に注目したい。
氏は、zoomgalsやクィーン・ラティファの曲を挙げつつ「みずからがリスペクトしてきた曲をきちんと聴けていたのか。そうしなくてはと思いつつも、どうも分かりづらいことについては、フェミニズムとか、セクシュアル・ポリティックスとか、ミソジニー(女性嫌悪)への応答とかいう枠組みで布置したうえで、外から触ることしかできていなかったという自己疑念がぬぐえない」(P.64)と記す。