推しからもらった光で、
別のところを照らす。
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──電線を愛でるようになって、対人間関係に変化が起きたりしましたか?
石山:単純に、20代半ばから30歳にかけて大人になったんだと思いますけど、電線というまったく言葉の通じないものに対して「好きってなんだろう?」、「また別の見方でいいところを探してみよう」といろいろな視点で考えるようになり、視野が広くなったなと思います。あと、お互いに尊重はしているけれど、他人と自分は別の人間で、相手の意見や態度に自分自身そこまで影響を受けなくなりました。それは、電線の態度に学んだことだと思います。
──著書を拝読して、石山さんの「相手の存在そのものを受け入れる」という姿勢が、人間関係に悩みがちな私には学びがたくさんありました。
石山:やっぱり、人間同士だと通じ合える可能性もあるので、期待したりがっかりしたりしますよね。それは、人間だからこそのおもしろさで、私ももっと楽しみたいと思う部分なんですけど、私にとってそこに踏み込むための土台が電線で。最初から、通じ合える可能性がないとわかっているのである意味安全で、双方向の矢印がない。矢印はないけれど、推しと私がそこに存在していて、その先に世界があって、私は推しからもらった光を反射板に映して、推しのいる社会を照らせるようになるのかなと、いま話をしながら思いました。