──私は、アイドルという存在を偏愛しているのですが、そこには多くのジレンマも感じています。アイドル業界の問題はいったん置いておいて、今回は「愛好家としての在り方」についてお話を伺いたいと思っています。というのも、『電線の恋人』を拝読して石山さんの「推し(電線)との距離感や愛で方」が素晴らしいなと思ったんです。「愛しているけれどもあくまでも他人=自分とは違う」という考えは、有機物・無機物に関係なく、人付き合いにおいて大事な考え方ではないかと。
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石山:わあー、そうですか。ありがとうございます。
──ファン目線は多様であって当然ですが、ときに危険な距離感も見受けられます。その結果、推されている側はファンに対して常に誠実で、元気で、ファンを愛さなければ“ならない”感じがある。それは推す側が勝手に作り出してしまった部分もあるのかなと思います。石山さんの愛でる際の心構え、について教えていただけますか?
石山:私が生身の人間を推す方向に行けなかったのは、好きになると一直線というか、大事なものに対して200%で愛情を注いでしまう性格だからなんです。それは、私自身、人付き合いが苦手で交友関係が広くないので、親しくなれそうな人に出会うとうれしくて。友だちには「重い女だね」と言われたこともありました(笑)。ただ、思い過ぎるのは相手も自分もしんどくて、付き合いの長い友人と関係が悪くなってしまったことがあったんです。20代半ばくらいですかね。そこで人間関係の難しさを感じて、マイペースに電線を愛でる方向に思いきり舵を切りました。